生きてるかぎり書けるもの
ホロウ・シカエルボク



このぼくのこころは
このぼくの鼓動は
このぼくの興奮は
このぼくの足跡は
衝動は
焦燥は
終焉は
再生は


あたらしい言葉を
燃やせば
古い皮質が
剥げ落ちる
剥き出しになった
まだ弱い皮は
たわいないことで
傷がつく


ほらね
見えるだろう
ドクドクしたものが
これはぼくの言葉だ
なによりも語ることの出来る
ぼく自身の原語だよ


慌てないでおくれよ
ひとつまみの旋律で
なにかをわかった気になんてなるなよ
ぼくの言葉は罠のように
たくさんの意味合いを含ませてある
書かれた字面だけでは
判断出来ないのさ


うたを歌うとき
音階だけでは意味がないように
楽器を鳴らすとき
音符だけでは意味がないように
言葉にそれが必要ないなんて
きみはどうしてそう考える?


このぼくのこころは
このぼくの鼓動は
このぼくの興奮は
このぼくの足跡は
見えるところになんか置かないし
そもそも
見えるように置けるようなものでもない
すべてを書けるなら
それは書く必要の無いものだ


ぼくの血だまりには
ぼくが生きたぶんだけの言葉が詰まってる
それははなから
語るためのものではないのさ
だから面白い
だから止められない
ぼくは書こうとする
いつでも
そのことだけを


生きてるかぎりは
書ける
もんなのさ





自由詩 生きてるかぎり書けるもの Copyright ホロウ・シカエルボク 2012-05-14 01:50:04
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