カーテンコールはないけれど
マーブル

気取らない
月のハンモック
紫のペチュニアの花
そんな夜に
黒い硝子の靴は
何処かしらと
少女は思う


銀色の森を見たかい?
なめらかな手触りの葉を
一枚取ったら
あの子に手紙を書こう
そんな夢をみている



優しい喉仏をしている狼たち
尖った耳をそばだてて
スカーレットな鼓動を
緑たちに吹きかける
鳴り止まない雨のために



ちゃちな世界だと
あの子は煙草を
吸いながら
窓辺で小声で歌っている
寝つけない夜は
こうしていつも
小声で歌っている
ハーモニカは吹けない


シルキームーン
ムスクの香りを纏って
僕はさあさあと
靡き始める風を
肌に付着させて
シルキームーン
透明な階段を垂れ下げて
上っていく人たちを
見上げているんだ
みんな笑っているんだ



1000匹の猫の行進
足音はひたひたとしていて
よくは聞こえないのさ
気儘に食べる夏草と
南風を浴びた息吹きたちがその場で硝子のように
きらきらと笑いだすように


ひまわりの根っこか尻尾が生えたライオン描いている


なだらかに小川に流れる
花びらの船に
淑やかに眠る祈りのようななにもかもを包む
リボンの気持ち
夕暮れの光景のなか
僕はたちまち泣きたくなる


この世界にさ
見飽きるものは
草臥れるものは
ぜんぶニセモノだから
それを笑い飛ばせば
愛せる気がするんだと
烏は風に乗った


今日の夜は
どこかスイートで
めちゃくちゃ痛いのと
ブランコ漕いで投げた
靴をくわえた犬が自棄に
愛嬌があるとか
毎日は何処でも転がり
跳ね返り宙返りするらしいとか


ジョークでも言っていたらもう夜明け前だ
新聞配達にほっとする
街灯がおじぎした紳士に見える
やわらかな眠気に
指先はシーツを撫でる


綺麗事は言わない
でも本当の話さ

笑っているんだ
いつだって


カーテンコールは
ないけれど


自由詩 カーテンコールはないけれど Copyright マーブル 2012-05-13 04:29:59
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