母の日に
ただのみきや


  さくらんぼの花が咲いている
  うっすら目を閉じ微笑んでいる
  ソメイヨシノのような艶やかな色香はない
  浮世を忘れようとその下で酒宴を張る者もいない
  白く清楚なその花は
  未来を夢見る婦人なのだ
  美しさを誉めそやされることよりも
  自分が散った後のこと
  生きる者たち皆に喜ばれる
  甘い実がたわわに生ることを願っている
  もはや桜桃という名前で呼ばれなくても
  「さくらんぼのお母さん」でかまわないのだ
  遊郭一の花だったソメイヨシノが散った頃
  母は誇らしげに咲いていた
  未来を見つめて微笑んでいた


自由詩 母の日に Copyright ただのみきや 2012-05-12 23:23:15
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