母の日に
ただのみきや
さくらんぼの花が咲いている
うっすら目を閉じ微笑んでいる
ソメイヨシノのような艶やかな色香はない
浮世を忘れようとその下で酒宴を張る者もいない
白く清楚なその花は
未来を夢見る婦人なのだ
美しさを誉めそやされることよりも
自分が散った後のこと
生きる者たち皆に喜ばれる
甘い実がたわわに生ることを願っている
もはや桜桃という名前で呼ばれなくても
「さくらんぼのお母さん」でかまわないのだ
遊郭一の花だったソメイヨシノが散った頃
母は誇らしげに咲いていた
未来を見つめて微笑んでいた