肥え太れ、生命の春
石川チヨコ

桜が咲く頃から梅雨に入るまでの2か月ほど
それはひどく心が沈む時季である

桜は生命エネルギーを吸い取る木だ
冬、つぼみを付ける前からじわじわとじわじわと通り過ぎる生き物から
ちゅーちゅーと吸い取り春、開花にそなえる
その恐ろしい木の下でどんちゃん騒ぎをする人
きっと吸い取られた生命エネルギーを少しでも取り戻そうとしているのだ

道端に咲くたんぽぽ。これほど不安にさせる花もない
桜以上に私を戦慄させる
害はないよ、私に害はないよ。そんなあどけない顔をして
しっかりと5月を知らせに来る抜け目のないやつら
桜よりも春の象徴だ


うっかり外を歩いた日には一日かけて山登りでもしたかのような疲労具合


肥え太ればいい、私は恐れない
梅雨さえきたらこっちのもんだ


自由詩 肥え太れ、生命の春 Copyright 石川チヨコ 2012-05-12 19:14:15
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