雪と木蓮
砂木

町では桜も散り 山すその我が家までの
道沿いに見える畑には 林檎や梨の花が咲き
雪溶けの遅かったこの地にも 緑の季節が流れ始めた

除雪機で雪をとばし なんとか建てたビニールハウスでも
稲の苗箱が並べられ 今年のお米を収穫するべく
幼い苗が 大事に育てられ 発育している

雪溶けと共に クロッカスが咲き始め
黄色の水仙や チュ―リップも陽射しに開き ならば
そろそろ と見上げる桃紫色の木蓮は まだ蕾をほどかない
家の裏山の日陰にあり カタクリの花と共に咲くのを
いつからともなく 待ちわびているのに

なぜ 春の暖かい日にも咲けないのかと見ると
少し離れた窪みに 固まったままの雪の塊がある
山すその日陰の 暖かさの届かない場所
雪と共に 冬の寒気を保つ所

桜は咲いて散ったけれど 雨の日が続き
畑を掘ったり 田んぼを掘ったりできない
豪雪から やっと見えた田の土も雨水がたまり
どろどろになったため 機械で耕せない
雪の次は雨か 冷害か 悪天候に
せっかくの春も 晴れやかにとはいかない

田んぼを掘れなければ しろかきが出来ない
田植えが出来ない ビニールハウスの苗が
田植え機では植えられないほど のびたら困る
ビニールハウスからも近い 木蓮の開花を止めている残雪に 
稲の苗が育たないように 冷気を保ってくれないかと願う

木蓮よ 木蓮よ
ヒキナギの鳥と共に 花咲く日をまちわびているけれど
蕾のまま腐っていく花は見たくない けれど
白い雪の塊を 砕いて消してしまうこともできない
身勝手な欲の塊が心に凍る

白い雪の溶けているすそ近くでは
今 クロッカスが咲いている
残雪が季節を越えて巡り会わせる 
ほどけない流れに 咲く花々
春の根が からみついている




 


自由詩 雪と木蓮 Copyright 砂木 2012-05-12 11:11:12
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