森の夜伽
月乃助
森には、巨きな扉がある
地図をひろげ、
内密空間の地理的分析に関する真の定理をさがす
それは、風景以上に一つの精神状況なのです
森は、幽玄性を証明したり
幽玄性の幻想をあたえたりする統合体
鉛直性の意識のよびかけの一つ
安易に
諸相から一般的な森に癒着したイメージを
そのまま受け取ろうとすれば、
絶対的にそんな解剖を拒否するのです
私は、理解しようとして、
森を集中した存在として想像したり
求心的な意識として 呼び覚ましたり、
つまらぬ徒労をくりかえす
それには、理由があるのです
この森で、
私の孤独の中心にある価値付与作用は、甚大で
原始的であり また 刹那的でもあります それは、
氷結に襲われた 囚われの守人
( 夜のひそかな中心で、夜伽をする者 )
森の扉の門番さながら
ただじっと 見張り 耳を欹て 待つ
そんな時、
沈黙が私にむかって反響する
私は、意識をなげさり 感覚をうかびあがらせる
森は、すでに死を斥けた
それならば、この扉の向こうには、、、、
森 ・・ お前は、何を聞いている
女 ・・ 何も。ここには、静寂しかないではありませんか
森 ・・ 耳を澄ませ、お前にもそれが聞こえるはず
女 ・・ なんの
森 ・・ この星の自転するその音が、それが、お前がさがしている
その扉の鍵
扉を凝視し、
その向こうに咲いているはずの、花の景色を想いやる
私は、その意識が拡散してしまわないように
もう一度 そして、もう一度 その巨きな
扉を見つめた