退屈な自我
……とある蛙

季節の変わり目に窓の外を眺めている。
外は雨 外出

細い両目から差し込む光の筋
不足するイメージの光量
暗い頭蓋骨の内部を照らす
プラネタリュームは暗く
毛穴ほどの大きさの星の光のみ
僕の頭蓋骨の内側は漆黒の闇に近く
何の映像も浮かばない


両目の窓から見える外界は

グロテスクな風景
魚の骨のような並木
舗装されていない泥の道
黄色の空

その道が空に向かって畝って登っている。



道を疾走しようにも
僕の両足の付け根は
瘤に様に膨らみ回転しない。

耳から聞こえる音は猥雑な音だ。
擦り切れた金属音で
低い周波数だが、下腹に響く
そのまま僕に排泄を催させる。

赤膨れで斑点様になっている手は
痺れて動かない。
意識は晴朗
気分は最悪。
漆黒の意識で
焦点がない。

意識の中に見え隠れするのは
頭頂部に宙づりにされた空中ブランコ
ゆあーんゆゆあーんと
意味不明のオノマトペを発して
誰も乗せていない椅子がスウィングしている。

光彩の足りない頭蓋内の一角に
蹲った自我
背を丸め目立たないようにして
暗闇に縋っている。
自我の呟きが頭蓋骨の内縁を一周し
そのまま顎を伝わって声帯を震わせる。
聞き取れないほどの予言と罵詈雑言
無意味な音声はグロテスクな風景に溶け込み違和感なく拡散する

嗄れ声は視線の端に見え隠れする悪魔払いのインチキ霊媒師にとって好都合
この先何かが始まる予感はあるが、確信はつかめない。



とても偉そうでインチキな とてもスノッブで意味不明な
とても優しくて無責任な とても厳しくて漏れっぱなしの

そのままの自我


自由詩 退屈な自我 Copyright ……とある蛙 2012-05-11 13:47:37
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