シホ.N


あるスピードをもって
街の夜明けをめぐっていると
かどを曲がるたび
まあるい月が現れては消え
消えては現れるのだ

四角い建物の影に
あるいは影から。
黒い樹々のあいだに
あるいはあいだから。

僕は月の姿に
畏怖のような気もちをいだき
月に支配されてゆく過程にあった。

不本意ながらも惚れてしまった
愛情きわまる憎しみなのだ
見ていたいだけなのに
逆に見られて萎縮してしまう
ふがいない僕自身への憎しみなのだ。

つづきうねる道はただくらく
それだからなお
月の光は冴えている。

街の夜明けをめぐっていると
月の姿は美しく
現れて消え消えて現れる。
僕は自由に冒されていて
月に支配されてゆく
その錯覚に恍惚とする。


自由詩Copyright シホ.N 2012-05-10 01:31:14
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