なりそこない。
永乃ゆち
今日私は一重瞼を二重に整形した。
もう何十年も一重であることにコンプレックスを持っていたから。
(大好きだった彼にフラれたから)
(これで世界が変わると信じていたから)
午後一時、手術は始まった。
そして午後一時二十一分、あっけなく終わった。
麻酔の注射が痛かった。
手術中も思ったよりも痛くて
「痛いっ」と声に出してしまった。
「一週間くらいは腫れますよ」
そう言って渡された手鏡を覗きこむと
出目金のようになった私が映っていた。
あまりに滑稽で笑いそうになった。
瞼にも自分にも。
しばらくは人目を避けて生活しなきゃ。
このままだと整形したのがまる分かりだ。
腫れが引いたらもう少しましになるかな。
もしかしたら整形したのは失敗だったかもな。
わたしをフッた彼は私を見て何と思うかな。
あぁ、それにしても麻酔が切れて瞼が痛い。
違和感があるし。
私本当は何がしたかったんだろう。
私いったいどこへ行くのだろう。
私を壊して私を作って。
何になるつもりなのだろう。
今は。なりそこない。
心も体も。なりそこない。
いつかこれで良かったと。
心から思う日が来るのかな。