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葉leaf

夢の中に置き忘れられた風景、その中で僕は置き忘れられました、その中では今も風が吹き木々が揺れ、人が悲しんでいるでしょう、どこにでもある宇宙の外れ、その崖の下へ僕は投身しました、崖はいくらでも増え続け、その度に僕は投身しなければならず、そして再び夢の中で僕は自分の死体を撫でています

0歳、開かれも閉ざされもせず、ただ祝われていた、悲しみの大地が支えていた、5歳、機械のように義務的に成長した、機械のように激しく喜び泣いた、10歳、自らの存在の反射としての羞恥、関係の副次物としての羞恥、15歳、微生物の優しさ、豪雨のような恋、他者からの贈り物としての自己愛、

僕は何でもかんでも都市に見えてしまうのです、田んぼに植えられた稲の苗、あれなんか都市のビル群みたいじゃないですか、水道完備の、山に登ると、鬱蒼と茂った林が都市みたいですね、鳥や虫が郵便の役割を果たし、僕の体も一つの都市です、こんなに精巧な都市はありません、会話は都市同士の話し合い

僕はいつものように「文学は政治のためのものか」「文学は社会の役に立つのか」という問題について考えていました、ところがこれは問いが逆さまだったのです、政治が文学のためにあり、社会が文学の役に立つ、ところが本当は更に違っていて、文学と政治と社会は等価だったのです、ってわけわからんね、

僕は「詩人」らしく自分の内奥に深く沈潜していったのです、するとそこに見えたのは街の明かりでした、あれおかしいなあと思い一軒の家の庭の木の内側に入っていったのです、するとそこに見えたのは国会議事堂でした、やっぱりおかしいと思い議員の体内をのぞくと、そこでは新聞が印刷されていました、

僕は果樹園から沢山の言葉をもぎ取ってきました、これらの言葉を選別して、梱包して、チラシなども一緒に入れて、宅配業者に送ってもらったのです、送り先はことごとく人の住んでない廃屋にしました、人がいなくても置いてくるように、そして言葉が廃屋の中で熟して腐敗していく、誰にも読まれずに、

僕は多重債務で困っています、学生時代、教師から受け取った愛情をまだ返していません、利息がついています、子供の頃、近所のガキ大将にいじめられたことにまだ復讐していません、利息がついています、今までずっと、制度によって与えられたレールを返却したことがありません、利息がついています、

僕の街には名前のない店があります、その店の売り物を眺めるのは楽しい、例えば僕がこれまでに忘却した大切な記憶が売られています、例えば僕の恋人への愛情が彫刻になって売られています、例えば僕の名前が名前の食物連鎖でどの位置にあるかの図が売られています、そして勿論僕の名前も売られています

今日、僕の人差し指が描いたひもを結ぶ円軌道は孤独でした、今日、僕の体をどこまでも包んでいた地球の大気は孤独でした、今日、僕の足跡はいくつもいくつも孤独のままでした、今日、あなたから届いた長い手紙は孤独でした、今日、あなたが僕に示したすべての好意は孤独でした、

人を不幸にするのは心の闇、だけれども国家は心の闇を少しでも解消させてくれるでしょうか、裁判など雲の上の話、誰もがみな心の闇を癒したがっているのです、国家は生活保護よりまず心の闇救済をしたらよいのではないですか、国家に権力があることが正当であるならばまずは国民の心の闇を癒して下さい

僕は生まれた時から既に裸ではなかったのです、あそこの家の二男だとか、祝いの言葉とか、将来農家を継ぐのだろうかとか、様々なレッテル貼りや気持ちや憶測をまとって生まれてきたのです、僕は今でも裸になることができません、やれ大学院を出てるとか、まだ無職だとか、十色の衣をまとわされています


自由詩 twitter Copyright 葉leaf 2012-05-08 14:44:46
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