お務め
HAL

希望と呼ばれるものに
過剰な期待をしてはならない

希望だってぼくら以上に忙しいんだ
あちらに希望を失いそうなひとがいれば

どれだけの遠い距離であっても希望は駆けつけ
そのひとに寄り添い抱きしめる

それは希望がほんとうに希望を必要としているかを
即座に見抜く力を持っているからなんだ

だから簡単に挫け弱音を吐くものが
すぐさま希望を求めてはいけない

それは風邪で38℃の熱をだし
救急車を呼ぶ行為とまったく同じことだ

ほんとうに崖っぷちの瀬戸際まで追いつめられ
一陣の風が吹けば荒波の海へ落下していくひとが

希望を強く求めても好いし
希望はそれにきちんと応えてくれる

そこだけを履き違えるなよ
容易く絶望するものたちよ

希望はほんとうにきみらが想っているほど
暇ではないことを知っておくべきなんだ

またほんとうに切羽詰まって生きるか死ぬかを
逡巡するひとはきみらが想う以上に多いのだ

希望はそのひとたちを救う役目を担っているし
そのためにぼくらの世界に存在している

でもきみらは希望を善なるものと
勘違いしているようだから

希望の正体を教えておいてあげるよ
希望は実は絶望だったんだ

それで多くのと云うより数え切れない
ひとびとを殺してきた

だから絶望は罰せられその贖罪として
希望としてそのお務めを果たしているんだよ


自由詩 お務め Copyright HAL 2012-05-08 01:53:16
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