思い出
たもつ

 
 
深夜、きみが
コップを割ってしまった
きみの夢の中で

思い出の品だったのだろうか
きみは泣き出して
泣き止まなかった
ぼくはきみの夢の中で
ただおろおろするばかりだった

翌朝、夢のことなど
すっかり忘れたかのように
ぼくらは簡素な朝食をとった
食事を終えると
きみは台所に行って
静かにコップを割り始めた

物は思い出ではないし
思い出は物ではない
それで構わない気がした
ぼくも一緒になって
コップを割った


自由詩 思い出 Copyright たもつ 2012-05-07 19:30:04
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