いばら姫
未有花

薔薇よ薔薇
私の体を養分に美しい花を咲かせておくれ


あの人は行ってしまった
私の手の届かないところへ

ひとり取り残された私は希望さえ失くしてしまった
絶望という名の牢獄に囚われて
薔薇の臥所ふしどで永遠に眠る私はいばら姫

愛しい王子様が訪れるまで
薔薇に抱かれて眠り続ける

もしも戦争が終ってあの人が生きていたら
彼は私の元へ帰って来てくれるかしら

薔薇に包まれて眠る私をみつけたら
あの人はくちづけて私を目覚めさせてくれるかしら

虚しさよおまえの名前は?
もう何度同じ問いを繰り返して来たことだろう
きっと王子様は永遠にやって来ない

あの人が帰って来なくても
あの人がくちづけてくれなくても
私はここでひとり薔薇と供に咲き続ける

時が無残に私を醜く変えてしまっても
美しい花が咲けばそれでいい

虚しさよおまえの名前は?
もうこの問いは二度と繰り返すまい

まもなく私の四肢を切り開いて
薔薇の根はあたりを埋め尽くす花園となることだろう

私は薔薇に抱かれて永遠の眠りにつく
いつまでも美しいいばら姫となって


自由詩 いばら姫 Copyright 未有花 2012-05-07 08:20:26
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