ひかり へだたり
木立 悟
羽がちぎれ
午後が見える
桃と乳の
濁りの音
近くにさわれぬ指の遠さ
水の層をつらぬく羽
大きな景から先に飛び去る
跡を跡に響かせたまま
午後の底の午後からとどく
小さな板の集まりの音
重なりの重なりを
流れる水
まだ喉に居る稲妻に
奥へ奥へと促す花
さらなる蒼を
蒼に待ちながら
曲がり角の花
変わらぬ風量
板から板へ
移る光景
岩になり城になり
花はくすんだ音を放ち
ひとつの笑みにじっとしている
銀と車輪と 不等距離の中心
空の浜辺のひとつの影
読めない文字の重なりが
午後へ午後へ
読めないままに打ち寄せる
空の底の息の群れ
水を夜へはじいている
黒に立つ黄や金や赤
層のはじまりを照らしている
音でも光でもあるものを
名づけようとしてやめたとき
午後は午後にうらがえり
煙の赤子に降りそそぐ
絵に埋もれた絵のように
譜に隠された譜のように
光ひとつの隔たりを
言葉は言葉に響きつづける