首 Ⅱ
マーブル
無口な果実は震えた声でこう云う
「果てで殺して」
泥の味が地べたに横たわっている部屋の空気
ベッドに寝そべったあなたはこう云う
「憎くって仕方ないんだ」
生憎愛想のないわたしはもうちっとも怖くなんかなくて真っ白なゆめに溺れている
罪だの傷なんてものはモノクロ写真におさめておけば楽になれるから
底に落ちれば最高だななんて考えている
もうなにも聞こえないし期待していないから月はもうすぐ塗り変えられるだろう
それはどんな色をしているかって
もしかしたら黒い虹色かもしれない
海辺で見えた鳥は銀河に滑りながら星を幾つも並べて玩ぶから
愛しくて哀しくなってるわたし
アンクレットがはずれないのは鍵をあなたが持っているから
早くかえしてちょうだいね優しくはずしてちょうだいね
襟元が少し歪み始めた夜明けの空虚さはちっとも離れてはくれない
結晶ができあがってそれを全部飲み干してみた
なんだか呆れ顔で笑うしかなかったよ
それは穏やかな夏の午後で
忘れられないのなら埋めればいい
静めればいい
そうすればあなたもわたしも
生れ変れるね
無口な果実は美味しくないから
今もずっと
立ち竦んでいる
氷のうえを歩く死神が優しくバラを空に放り投げてた