つめたいジャム
吉岡ペペロ
あのひとのうちで食べた朝メシは
こんがり焼かれたトーストだった
自分ちとはちがうパン
自分ちとはちがうマーガリン
ジャムもちがった
そのなにもかもに違和感を感じて
ずいぶん遠くに今いるんだなと思った
楽しくなかった
学校に行かなくてはならない
あのひとも仕事に行くはずだ
そういえばジャムがつめたかった
ふたを開けるとマーガリンの線が混じっていた
シミを取り除くような気持ちで
カリカリと音立てて
こんがり焼かれたトーストにジャムをこすりつけた
さきに塗ったマーガリンが滑るだけで
ジャムはなかなかトーストになじまなかった