椿の湯
月乃助
里にくだると
花の咲く共同湯がある
音をなす早瀬の
そのほとりで 今は、椿がさきほこり
三ぶ咲きの桜たちが
うらやましそうに 見おろしている
昼間から入りにくるのは 老婦たちばかりで
ときに 間違えたように若い娘がいたりする
子を生まぬ形のよい乳房に 私は知らずに嫉妬の眼をむける
婆さまたちが、村にできた
コンビニの話をしていた
( ・・・・昔は、生そばがあそこで食べられたのに )
肌がしっとりと湯をすいはじめ
ほてったそれが汗をおとすころ
降り始めた小雨を
小さな針のように 背に受けた
湯殿の先の椿の花にみとれていると
( xxx山の麓のむすめさんけえ・・・ ) と
声がかかった
二年ぶりの春が、
私のところにやってきた