『かさわすれ』
あおい満月
雨に振られた日は
必ずといっていいほど傘を忘れる
車窓から見える
雨雲から
ほんのわずかでも
晴れ間が見えていたりすると
もう傘の存在すらも
忘れてしまう
片手に缶コーヒーがあれば
なおのこと
おまえには高い傘は持たせられない
安いビニール傘でたくさんだ
呑んだくれた母の小言に
ビニール傘にはりついた雨粒が
まるで散在した詩みたいで好きよ
と反発するわたし
けれど、
そのビニール傘さえも忘れた日は
気にもとめないと思いながらも
砂利道で転んだときの痛みに似た
かなしみが吹き渡る背中
かさわすれ
わたしはわたしを
かさわすれ
二〇一二年四月二七日(金)