HOLIDAY
ただのみきや
休日には光の姿態に花を挿し
寝そべる背中に猫でも乗せて
二三冊の本にマスタードをたっぷり塗って
後ろ向きに釣り糸でも垂らしてみようか
古い音楽ばかりが飛行船となる場所で
とりとめのない議論からスピンオフした
嘘のような啓示をキューで突く
象牙の太陽と青い鼓笛隊の反乱
休日にはきみの癖を刺繍して
公園で寸劇を繰り返しながら
誰も知らない惑星でたった一人
蠍のような詩に打たれて灼熱の幻を見よう
いのちが飽和した貝殻に
穴を穿つ月の涙の鐘の音を
蜜のように奪われまいと
必死に接吻を求める幼子への帰り道
休日には鯨の腹の中で眠る
誰にも起こされないように
遺書を枕に羽毛よりも花びらよりも軽やかな
ひんやりと降り積む無言に埋もれよう
幸福の匂いに包まれながら
自分の体臭のように気付きはしない
クローバーの丘に吹く風よ
無情な時の勲章に変わり果てるな
《HOLIDAY:2012年4月》