シグナル
草野春心



  きみの瞳のなかに
  空一杯の夜が煌めき
  僕は君の胸のひとつから
  柔らかな心だけを抜き取って
  脆い息を吹きかけただけで
  そっと元に戻したんだ



  熱い雨の降ったあとでは
  大きな信号機の光は
  赤も青も黄色も
  壊れたように溶けあって
  ささやかな水溜まりのなかで
  きみの不可解な瞳だけが
  ゆっくりと
  輝きはじめたんだ



  ひっそりと
  囁きはじめたんだ




自由詩 シグナル Copyright 草野春心 2012-04-28 12:22:56
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