夕方と夜のあいだの空気
吉原 麻

あ ねえ
     ただだまってコーヒーを啜る君に話しかける
     コーヒーにはミルクが二個入ってる
     ミルク味のコーヒー
     わたしのコートの色と同じ
     ミルク味のコーヒー 

今日は映画を 観に行かない?
     思いきって誘ったのに君はスプーンをなめるばかり
     スプーンはきっと金属の味がする
     血の味と似た
     金属のにおい

なんでもいいよ 観たいのとか ないかな
     でもわたしは映画を人と一緒に観るのは好きじゃない
     だって泣いているのを見られたら恥ずかしいから
     つまらなくて居眠りしたのをあとで指摘されるのが嫌だから

なんで返事 してくれないの
     ハイライトに火をつけた君はかっこうの暇つぶしとばかりに煙をむねに吸いこむ
     わたしの言葉も
     少しは吸収して
     煙草よりは
     健康にいいよ

じゃ 今日は新宿のイルミネーション 観に行こう 綺麗だって
     だけどわたしは寒いの嫌い
     冷たい手をわざと外に出しておいても
     きっと君は
     気づいてくれない
     くるんでくれない

明日も あさっても 返事 しないつもり?
     わかってるから
     もういいの


自由詩 夕方と夜のあいだの空気 Copyright 吉原 麻 2004-12-05 21:17:44
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