落差
HAL
きみは暫々それは知ってると言う
きみは暫々これは知ってると言う
きみが博識だということを
ぼくは否定する気はない
でもきみが饒舌に語る話を聞いていると
何か絵画のない額縁だけを聞いている想いを
ぼくはいつも抱いてしまう
それがなぜなのかをぼくは
今日まで解らなかった
でもふと気づいたんだ
知っていることと
解っていることは違うのだと
きみはほんとうに色々なことを
知っているし教えられる
でもきみは果たしてその知ってることを
自分なりに解っているんだろうか
ぼくを知っていても
ぼくを解っていることにはならない
愛を知っていても
愛を解っていることにはならない
弱さを知っていても
弱さを解っていることにはならない
言葉を知っていても
言葉を解っていることにはならない
きみは知っているのだろうか
知っていることと解っていることには
ひとには想像ができない
大きな落差があることを
ほんとうにきみは知っているんだろうか
知っているだけでは何の役にも立たない
多くのものがぼくたちの世界には
存在しているということを
解っていなければ
何の役には立たない多くのものが
ぼくたちの世界には存在していることを
それを解ったうえで
果たして知るということを
求めようとするのだろうか
その隔たりの
余りに果てしない落差を
ほんとうにきみは知っているだけでなく
ほんとうに解って生きているのだろうか