ノート(なのほし)
木立 悟






夕べの膝が
階段を降り
蚊の群れのような「か」の文字を
楔の如く浮かばせている


どこまでも魚は魚なのか
死ぬまで泳がねばならないか
水と水以外との語らいを
宇宙より永く聴きつづけて


外の光の 光のすべてが
内へ内へと入り込み
真夜中も真昼も無いように
氷のように街を刻む


わたしはよだれのあぶくを視る
涙にあふれた無数の目
銀河と銀河の衝突を視る
伝える間も無く絶える星を視る


わたしは今はわたしだが
別にわたしでなくてもよかった
わたしをわたしと決めるのは
常にわたし以外のわたし
他の誰でもあるわたしなのだ


ぽあんぽあんと音が呼ぶ
ぽあんぽあんと板が呼ぶ
暗黒の壁にしきられて
宇宙も時も
つづくことをやめないのだ
つづくことを
やめられないのだ






















自由詩 ノート(なのほし) Copyright 木立 悟 2012-04-25 22:52:14
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