太宰の孫
マチムラ

あらゆる行動の最小公約数に
自分が残らないようにすることで
望んでやっているわけではないと
いつもいつも自分に
使い古した免罪符を渡し続けているのだ

そんな自分の発明した錬金術を使い続けることで
ますます自己嫌悪が募るわけだが
現実圧でくらくらする頭の考えることは
手抜きをしながら皆の行進に遅れずついていく方法
次第に疲れて自分の手足でさえ
借り物のようになっていくことに
少しばかり安心している自分がいる

どこにも行けないのではない
どこにも行かないのだ
上手にマメの水抜きが出来るようになったら
出発するつもりだったが
そんな日は来ないことを知っている
だって足にマメをつくったことが無いのだから

不戦勝っていう言葉は嘘なんだね
殊に人生においては
最近それがやっとわかってきた
自分はただ差し迫った問題を
見送っていただけなのだ
検討課題というもっともらしい
お着せ列車に乗せて

いつも重要な分岐点は
過去にあるものとばかり思い込んで
いま自分の手に握られている
スウィッチングレバーを軽視して
この告白めいた心中の徒労を
今ここでどの様に着地させるか
考えているということに
未だ奇怪な心の錬金術師を
辞めきれていない理由があって
だからこそ詩が書けるわけだが
自分から着た拘束衣を鏡に映して
喜んでいるうちには
外にも出られないことも知っていて
そんな仮称:能動的他殺の言い訳に
自称:太宰の孫を気取ってみるのだ


自由詩 太宰の孫 Copyright マチムラ 2012-04-22 15:37:26
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