真夜中の回遊
寝坊ぎぶあっぷ

カーテンを ふふっ と揺らして
“遊びに行くよ”と風がささやく

ベランダに出るとまだ肌寒く
真夜中の匂いが甘く漂う

空が丸い皿をひっくり返して
夢中でざらめをかじっている
それがしんしんと池に積もって
魚が ぱくり と水面をつつく

私も一匹の魚
唇が乾いたら甘い水面を探し
炭酸の泡がはじける音で
星たちと話をしよう

カーテンを ふふっ と揺らして
“遊びにいくよ”と風がささやく

小銭を握り、サンダルをひっかけて
ちゃぷん と薄闇に浸かる
玄関の鍵を静かに閉めて
ゆらゆらと家々の間を泳ぎだす


自由詩 真夜中の回遊 Copyright 寝坊ぎぶあっぷ 2012-04-22 02:48:49
notebook Home