げんこつ
nonya
そこに
握り締めていたものが
怒りだったのか
憎しみだったのか
恐れだったのか
あるいは優しさだったのか
まるで思い出せない
たとえ
プライドの端を踏んづけられても
握らない掌を空気にそよがせて
今の自分は許してしまう
たとえ
突発的に戦いを挑まれても
握らない掌で空気を押し止めて
今の自分は謝ってしまう
決して
大人になったからではない
何処かが擦り減って
接触不良を起こしているだけだ
空気と仲良くなりすぎて
元気なげんこつを作れなくなった
ただ柔らかいだけの掌が
今となっては
少しだけ哀しい