自転車でいこう! Ⅱ
そらの珊瑚
赤信号で
一台の自転車が止まる
重そうなブレーキ音
それはそのはす
後ろの荷台には
補助シートに乗せた幼子
お母さんはハンドルを
ぎゅっと握って
足をつく
背中におぶわれた赤ちゃんは寝ていて
首がガクリと折れて
天を向いている
前かごには
買い物袋
白ネギが飛び出している
ハンドルには
トイレットペーパーと
ティッシュペーパーが
ぶら下がり
もうこれ以上は
無理です、隊長! と
自転車のタイヤの
悲鳴が聴こえるよう
それでも
彼女は
非情にも
さらに荷物を載せるつもりだろう
この先の薬局で
特売のオムツを買って
ペダルをこぐのは
私なのよと
いわんばかりに
その荷物は
望んで得たもの
行けるとこまで
行ってやろうじゃないの
背中に
追い風を吹かせるように
壊れないようにと願う
自転車も
彼女も
青信号になって
飛び出していった
彼女のポニーテールが
左右に揺れた
まぶしくて
わたしは日傘をかしげる
帽子を
被ることさえしない彼女は
いつかのわたしかもしれない