自転車でいこう! Ⅱ
そらの珊瑚

赤信号で
一台の自転車が止まる
重そうなブレーキ音
それはそのはす
後ろの荷台には
補助シートに乗せた幼子
お母さんはハンドルを
ぎゅっと握って
足をつく
背中におぶわれた赤ちゃんは寝ていて
首がガクリと折れて
天を向いている
前かごには
買い物袋
白ネギが飛び出している

ハンドルには
トイレットペーパーと
ティッシュペーパーが
ぶら下がり
もうこれ以上は
無理です、隊長! と
自転車のタイヤの
悲鳴が聴こえるよう

それでも
彼女は
非情にも
さらに荷物を載せるつもりだろう
この先の薬局で
特売のオムツを買って
ペダルをこぐのは
私なのよと
いわんばかりに

その荷物は
望んで得たもの
行けるとこまで
行ってやろうじゃないの

背中に
追い風を吹かせるように
壊れないようにと願う
自転車も
彼女も

青信号になって
飛び出していった
彼女のポニーテールが
左右に揺れた
まぶしくて
わたしは日傘をかしげる
帽子を
被ることさえしない彼女は
いつかのわたしかもしれない


自由詩 自転車でいこう! Ⅱ Copyright そらの珊瑚 2012-04-19 10:23:38
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