夜を仰ぐ
石田とわ



             明滅する赤や緑の光を浴び
             暗闇にしまうまは横たわる
             静けさの中でざわめきだけが
             息をひそめている
             わたしは歩くあてどなく
             行くあてはどこにもない
             これが孤独というものだろうか
             灯りの消えた見知らぬ家の前
             寝しずまる人々
             ざわめきが息をひそめるなか
             若い夫婦が抱き合っている
             年寄りは頻繁にトイレに起きだし
             怖い夢をみて子どもたちが泣きだす
             静けさが歩けと背中を押す
             泣いてしまえる夜ならば
             どんなによかっただろう
             今夜はただ歩くしかない
             しまうまの背で立ち尽くし
             夜を仰ぎみる








自由詩 夜を仰ぐ Copyright 石田とわ 2012-04-19 03:59:09
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