蜃気楼
千波 一也



蜃気楼、と名のつく国へ
ゆびさきに力を込めて
風をおくる

かろやかに静止する
すべてのリズムは雨に流れて
つい、空を見上げる

何もないということが
両手のうえに確かにあって、
乾かぬように私は尚更
遠くを見つめる

約束、と名のつく偽りごとに
やさしい舟が今宵も浮かんで
誰かが何かが
近くなる

確かめるすべなら、もう
あしたの向こうへ発ったから
ちいさな一途に
ひとり、笑む






自由詩 蜃気楼 Copyright 千波 一也 2012-04-18 20:13:38
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