ぴかぴかの机
服部 剛
うつを抱えながら、日々がんばっている彼が
汗だくで机をぴかぴかにした後
休憩室で青い顔してのびていた
あんまり一生懸命だったので
(無理すんな)とは言えずにいたが
ぐったりしている彼を見て
「明日の余力をとっとかないと」と思わず
少々、きびしく言った
それははじめて僕が心から
彼を思えた言葉であった
春の嵐の夜だったので
着替えて休憩室を出る前に
「じゃあ、運転気をつけて」と言い残し
僕は職場を、後にした
今頃、ハンドルを握り
生まれて間もない赤ちゃんのいる家へ走りながら
ワイパーの動くガラス越しに彼は
僕のひとことを、思い出すだろうか?