下駄箱の夏
たもつ

 
 
運河に沿って
空の下駄箱が並ぶ
靴はまだ誰かの
想像でしかないから
父は今朝も裸足のまま
戦争に出かけた

船着場で
子どもが遊ぶ
声は聞こえなくても
音でわかる

裏の楊おばさんが
赤い鶏卵の入った
買い物袋を提げて
歩いてくる
蟻の行列を
器用に跨ぐ
乳房が揺れる
 
 


自由詩 下駄箱の夏 Copyright たもつ 2012-04-16 19:23:32
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