つぃと
ズー

よくわからないとこでよくわからないことが階段を降りてくる。よくわからないとこは時間でよくわからないことはないがよくわからないことはしなやかだ。焼き魚のにおいがする。母ちゃんが砂場にいる私を呼びにくる。ごはんだから帰っておいで、と、よくわからないとこで手招きする。夕焼けの家並みに焦げたにおいがする。階段を降りてきたよくわからないことが泣いている。砂のトンネルから引き抜いた手が湿っている。よくわからないとこはよくわからないことで進み、よくわからないことに私は夕焼けに飛び込んだ。父ちゃんは焼き魚から小骨を抜きとり、姉ちゃんに食べさせていた。お皿の隅に寄せられた小骨が恥ずかしがってよじれている。よくわからないことはよくわからないとこでまだ泣いている。波紋でぐにゃぐにゃに歪んだ夕焼けの家並みが静まる。底を蹴りかえしたら手に引っ付いている砂がきれいにおちる。尻尾から一番太い骨で繋がっている魚の頭がのこる。父ちゃんは姉ちゃんをお風呂にいれる。テレビのまえにあった食卓では魚の頭がチャンネルをまわしている。よくわからないとこで母ちゃんが呼んでいた。手を伸ばすと夕焼けに飛び込んだ私は笑いこける。よくわからないことがよくわからないとこでよくわからないことに泣いている。


自由詩 つぃと Copyright ズー 2012-04-15 12:43:04
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