アクセルに心酔
三奈
アクセルを踏んでスピードをあげる
普段は開けない車の窓を開けると
夕凪の匂いがふわりと香った
あぁ、なんて心地よい
名前は過去に置いてきた
積み上げてきたものは全部
トランクの中で眠らせておこう
考えすぎの脳みそも
シャットダウンしておやすみなさい
名無しになったこの身体
叫びだしたくて疼いている
私は私でなくなった
誰も知らない私になった
だから、全部知らんぷり
時間も
鳴り続ける携帯も
手を振ってくれた対向車も
全部全部 知らんぷり
まだ戻らない 戻りたくない
現実が恋しくなるまで
今はただ
加速する心に酔いしれていたいよ