ヘラブナ
小川 葉



わたしは
ヘラブナである

めのまえにおちてきた
はりがついたえさをくわえ
つりあげられては
リリースされる

ヘラブナとは
そのような
いきものである

そんなこともしらない
わたしは
ヘラブナである

ヘラブナつりせんようの
うきもあるという

ほそくて
いろあざやかな
めもりのついた
くじゃくのはねで
できている

くじゃくという
とりのなもしらないで

みずのなかから
きょうもまた
つりあげられる
ヘラブナである

やんなっちゃうなあ
なんて
おもわずに
ほんのうのまま

つまがしゅっさんを
ひかえてるのに
またつられちゃった

そしてまた
リリースされて
おれたち
なにやってんだろうなと
いったとたん
つまがつりあげられる

するとわらいながら
つまがリリースされて
かえってくる

おれたち
なにやってんだろうな

そんなわたしたちを
つりあげてくれた
おじさんたちが
さいきんこないのです

ヘラブナつりも
はやらなくなったんだな

おれたちを
つりあげてくれた
おじさんたち
しんじゃったのかな

しかたがなくて
ほんらいの
ヘラブナのくらしにもどります

はりがなくても
えさは
じぶんでさがします

わたしは
ヘラブナである



自由詩 ヘラブナ Copyright 小川 葉 2012-04-15 01:25:56
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