もぐら
はるな


まちは固すぎるので
気をぬくとぶつかって死ぬ

あらゆるものが
手に入れやすくなり
あふれ出すようになると
昨日がどんどん遠ざかり死ぬ

やさしさが
一山いくらの値札をつけて
売り飛ばされるようになると
やわらかい部屋のなかで育てられた子どもたちは
コーヒーが熱すぎて死ぬ

世界中がラブアンドピースを叫びはじめると
日本人は愛を書けなくなって死ぬ

ひとびとは最近
生きていることに慣れすぎているので
生きていることを忘れたまま死ぬ

もぐらたちは
まちが固すぎるので
だれにも知られることなく
生みおとされることさえなく
つめたい土のなかで死ぬ



自由詩 もぐら Copyright はるな 2012-04-14 22:12:09
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