とおりいっぺんの涙
春仙

大きな帽子を被ったまま
月を背中に立っている

これといって悲しいことがないのに
乾いた瞳から涙が零れた
なあんにもない空っぽの現在(いま)で
船のように揺られている

ここから一歩も動けない
ここから一歩も進めない

それが悲しいというわけじゃあない
石のように来る日も来る日も
揺られながら立っているだけだ

冷たい頬に涙が零れた
何かが悲しいというわけじゃあない
何かが辛いというわけじゃあない

なあにもないのに
乾いた瞳から涙が零れた
空っぽの心が
からん、と、なった


自由詩 とおりいっぺんの涙 Copyright 春仙 2012-04-13 20:44:15
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