静物園
るるりら

この川を もすこし下ったところにあるのが 静物園
果物や骸骨が 額に収まっている花のように静かな生き物の館
ガラス張りの館の角は どこも ゆるやかに丸く
おたまじゃくしの卵のように静謐

いちばん大きな生き物は くじら   の骨
なだらかに 組み立てられたエレベーターは
登るほどに鯨の尾の裏に近づく
そのうち 背骨を上昇する 
鯨の顎ごしに見上げる雲は 鯨の鼻の穴に止まったままだ
橋のような ろっ骨に 吸い込まれそうな 雲だ

海亀の甲羅に 女の子がひとりで 座っている
わたしは はじめてあう その子のことを よく知っている
「あなたは この橋の下で 生まれた子でしょ?」
「お母さんは 拾ってきた子だって 言っていたけど。
おねぇさんは なぜ そんなこと おもうの?」

雨が降ってきた
静物園の展示物は 押し黙って 空のいうことを みんなで聞いている
雨だというのに 鳥の声も する

鯨の ほね も
海亀の ほね も
人の ほね も
竜宮のつかいの ほね も
亡くなった ちいさい子も
鳥と雨の声を 
聴いている


みんな みずから 生まれてきたんだね
透明な屋根に一斉に 
みず が はじけて
静物たちは わらってる




自由詩 静物園 Copyright るるりら 2012-04-13 17:37:14
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