杖
HAL
ぼくは杖など必要ないと
想って生きてきた
杖を欲しがる奴は
弱い人間だと見下してきた
でも何故なんだろう
ぼくはいま杖を必要としている
杖を欲しがる奴には
絶対なるまいと決めていたのに
ぼくはいま杖を欲しいと想う
それがないとぼくはもう歩けない
折れない杖
失わない杖
去らない杖
ぼくはいまそんな杖を欲しいと願う
ぼくはいまそんな杖を欲しいと想う
弱い人間だと呼ばれるのも怖くない
情けない人間だと言われても平気だ
ぼくはいま杖を欲しいと願う
ぼくはいま杖を欲しいと想う
この拷問みたいな生に寄り添ってくれながら
支えつづけてくれる一本の杖を欲しいと想う
ぼくはもう老いぼれたのだろうか
意味なく歳月を重ねたのだろうか
あるいは自分が折れそうになっているんだろうか
それとも何かに敗北しようとしているんだろうか