海辺にて
石瀬琳々

潮騒がさわいでいる
白い手のひらを翻しながら


あなたが光を浴びて笑う海辺です
わたしがまぶしそうに昼の月を探す
あなたが風に吹かれてたたずむ海辺です
わたしが泣きだしそうに砂に貝を拾う
波にたわむれて歩く素足に
物問いたげな時が寄りそう


あなたは逃がさないように
あなたは時をしっかりつかまえた
確かな指先でそっと
わたしの心を握りしめる
すべてつかまえようとしては駄目
風のようにいつかすり抜けてしまうから


あなたは春のひとみを持ち
わたしを見つめる永遠の海辺です
こぼれるのは涙だけでいい
あまさないように抱きしめていようと
不器用なあなたを
臆病なわたしを


ほら潮騒がさわいでいる
白い手のひらを翻しながら


ひとみを逸らして駆けてゆく
あなたのやさしい指先を逃れて


遠く春の海が光る、







自由詩 海辺にて Copyright 石瀬琳々 2012-04-12 14:03:44
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