シホ.N


「旅人よ
うしろには
できたばかりの
道がある」

道はあるけれど
道は何も語らない
歩いてきた道を
ふり返って見つめたりはしない
つぎの一歩をふみだすたびに
その前の一歩は
荒野のなかにうずもれていく

旅人よ
うしろには
なんの思想ももたない
地平線が一本

旅人には
ちょっとした過去があり
困難をはらんだ未来があり
そして
そんな過去も未来も吹きとばす
強烈な
現在の一秒一秒が
重く落下し
軽やかに流れ
意味ありげにせん光を放つ


自由詩Copyright シホ.N 2012-04-11 00:40:30
notebook Home 戻る