女のあたい
月乃助

女の値段は、4000エキュだった
それが高いのか 安いのか 分からなかった
でもそれは、今では 問題にもならないのかもしれない

女の背には、遠くに橋があった
黒い森を つないでいた

好奇の目を向ける男や
嫉妬深い女たちにも 笑顔をたやさない女だった


        *



婚約指輪の値段を聞いて
女は、もっと高いのを買ってくるように
それを男につき返した
女は、
それが 自分の値段のように思えた



        *




この森は神さんたちが住むという
神聖な修行場だと
男たちはみな 隣町まで女をもとめに行った
そこには、昔 売春宿があった



        *



昼間から街に立つ女は、
ホテル代別で 20000円だと男を誘った
友達の家を追い出され
ネット・カフェで暮らしていると
そんな話だった


        *



森の女は、そんな話をきいて
自分の値段をはかりかねた
森の 屈強な男たちの 巨きな睾丸をゆらす猿たちの 赤ら顔の鬼たちの
値踏みする目に あらがいながら



        *


夜の冷たさが
帳をおろす

雪のとけた 山道に影をなげる
月夜

女を買いにやってきたのかと、
戸をたたく音に
獣か 人か 鬼か 男神か
いつまでも 眠りのはしで 
それを聞いているのだった










自由詩 女のあたい Copyright 月乃助 2012-04-10 14:45:41
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