片づけられない荷物と 燃える火と
わすれな草

家族三人が長年住みなれた
今は空き家となっている家を片づけた
古くなったテレビや炊飯器  
使い込んだ家具や食器
過去の時を刻んだカレンダ−
それらはわたしたちのまえにいつも置かれていた
あるものは燃えさかる火のなかに
あるものは埋め立てゴミとして
それぞれが行き場を見つけ
巡り巡ってあらたに生まれ変わる

それらのものにどれだけの愛をそそぎいれたことだろう
まだ使えるものだけをわずかに残した
ガランとした空間
目には冷たい空気
しかし
こころには懐かしい空気

目をつぶればたくさんの抱えきれない荷物が
そこに残っている
まだ整理されずに片づけられずに

その一つひとつを
わたしはどうしても片づけることができない
捨てることも燃やすこともできない荷物
この家を手放すときには
どこに運んだらいいのだろう

やがて
わたしの火が消えようとするとき
この家に来て
じゅうぶんに背負った荷物の上に
さらに
一つひとつに名札の付いた荷物を背負って
わたしは薄明の国へとむかうのか

思い出という荷物
一つずつ紐とき
懐かしみながら


自由詩 片づけられない荷物と 燃える火と Copyright わすれな草 2012-04-09 00:03:05
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