片づけられない荷物と 燃える火と
わすれな草
家族三人が長年住みなれた
今は空き家となっている家を片づけた
古くなったテレビや炊飯器
使い込んだ家具や食器
過去の時を刻んだカレンダ−
それらはわたしたちのまえにいつも置かれていた
あるものは燃えさかる火のなかに
あるものは埋め立てゴミとして
それぞれが行き場を見つけ
巡り巡ってあらたに生まれ変わる
それらのものにどれだけの愛をそそぎいれたことだろう
まだ使えるものだけをわずかに残した
ガランとした空間
目には冷たい空気
しかし
こころには懐かしい空気
目をつぶればたくさんの抱えきれない荷物が
そこに残っている
まだ整理されずに片づけられずに
その一つひとつを
わたしはどうしても片づけることができない
捨てることも燃やすこともできない荷物
この家を手放すときには
どこに運んだらいいのだろう
やがて
わたしの火が消えようとするとき
この家に来て
じゅうぶんに背負った荷物の上に
さらに
一つひとつに名札の付いた荷物を背負って
わたしは薄明の国へとむかうのか
思い出という荷物
一つずつ紐とき
懐かしみながら