モエサケル


 自分の指を切り落として火を灯した夜
 非可塑のたばこは声ではなかった
 ささくれを噛んで飲み込んでみても
 ち、ま、ちました皮が歯茎に張り付くだけでもう誰もいない夜
 恒星は辛くて吸えない

 かすかに
 吸い込まれた指の味は覚えていないが
 ケレン味を帯びた赤の喚きは明々と
 円居のままで話していくうちに犯されたともだちの
 なくなった指輪みたいに

 鉄パイプに土を詰めて
 ベランダにほったらかしにしていたら
 鉄は夜ずんでいた
 泣いているともだちの
 スカートの裾は鉄染みていた

 ギブスまみれ
 灰巡るような無形のチャコール・フィルター
 百万の花弁

 汚れた、汚れた火で、吸い回しされたあいつの脚

亡霊色のけむりは換気口へ掻き消える悲鳴のようなくるめきを見せて


自由詩 モエサケル Copyright  2012-04-06 19:46:36
notebook Home