年増、あるいは舞台について
三原千尋

冷たく尖った風とか
蛍光灯みたいにぎらついて凍る日差しとかが
自分をいじめているみたいに感じるのは

あたしもうぢき駄目になる
あたしどんどん老いてゆく
あたしどんどん朽ちてゆく、と思い込んでいて
その速度をいたずら半分に早められているような
そんな被害妄想のせいだ
そうかそうか、なんだそうか

で、その妄想ソースドコー?wwwと
自分に突っ込むようにしなくてはいけない
さもなくば
あたしほんとに駄目になる
えげつないほど駄目になる

咲き誇るお花とか
人を突き飛ばしてそこに群がる酔っぱらいが
よってたかって自分をいじめていると感じるのは

あたしもうぢき駄目になる
あたしどんどん朽ちてゆく
いちども咲かずに朽ちてゆく、と思い込んでいて
なおかつ一度も咲けなかったことをばかにされているような
そんな被害妄想のせいだ
そうだそうだ、きっとそうだ

で、お前は誰と戦っているんだ、と
自分に突っ込むのを忘れてはいけない
さもなくば

あたしほんとに駄目になる

もう人として駄目になる
死刑レベルで駄目になる
綺麗なお花を踏みつけて
好きな人すら傷つけて
罪なき人を傷つけて
今度こそコントの国にすら住めないばけものになってしまう
殺られる前に早く早く牙かくせ
マイクロフォンで鞭打って飼い慣らせ

あたしがおばさんなら
あんたは棺桶に片足突っ込んだ死に損ないだよくそじじい、って
みんなで一緒に陰口叩こうよ
そしてばかみたいに笑おう
そのための場所は用意しておくよ
そのための場所は全力で護るよ

美しくない女だって立てる舞台があるよ
美しくない女なんていないよ
美しくない人なんていないよ
いないんだよ

殴り合うけど
いじめないよ
愛みたいに強烈な
拳を返してね
ここではすべての人が美しい

世界中のくずがみんな美しいばけものになれますように。


自由詩 年増、あるいは舞台について Copyright 三原千尋 2012-04-06 18:20:37
notebook Home