私信
HAL

突然 私信が来た
それはぼくが詠んだ詩に
ついての批評ではなく

その詩を契機に
その人物の思想・信条を元に
ぼくの思想・信条を問うものだった

一通目は言葉は荒いが論理的に
皇室に向けた思想・信条の批判だった
ぼくの祖国に向けた批判だった

返信を返した
送られてきた内容のぼくなりの
考え方を添えて

しかしまたも私信は批判を越えて
私信による議論になってしまった
ぼくの祖国の歴史と皇室は愚弄されていた

ぼくはきっとその人物は知らないのだろう
美智子皇后が『皇室は祈りでありたい』と
語られていたことは

次に送られてきた私信には
その人物の生い立ちとその為に
受けた傷とそれは皇室が根源だと読みとれた

ぼくはここは思想・信条を戦わす場ではない
そして最後の返信であることを告げた
もちろんぼくもまた自裁を為したことは書き控えた

ぼくはずっと想ってきたことに気づいた
被害者感情を露にすることは許容できないことだと
それは己の思想・信条を正当化することだと
もちろんそのことは微塵も記さなかった

でもぼくの祖国では年間で3万人を越える
自殺者が居ることもぼくの祖国だけではなく
世界には大きな悲しみを背負って生きているひとが

果たしてどれくらいいるかはぼくには数え切れない
でもそう云う国に生まれそう云う悲しみを背負う定めだったと
それを救うのは変革ではなくどれだけ死語になってしまっても

Lennonが射殺されるまで言うのを辞めなかった様に
『愛と平和』を言うのを辞めないことだと想いながら
その人物にもう議論はしないと最後の私信を送った


自由詩 私信 Copyright HAL 2012-04-05 11:12:58
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