無知
……とある蛙
音は空気を通過するだけで屈折する
光は水を通過するだけで屈折する
事実は脳髄を通過するだけで屈折する
視た
聴いた
嗅いだ
触った
経験という名の感覚の残滓は
時間を刻むことも無く
他の事実とともに希釈する
文字で刻まれた事実らしき物は
書き手の恣意的な記憶の残滓で
当初光を放つ
鮮やかさを誇示する
そんなものは時間と共に剥げ落ち行く
物が語るストーリーは
何も屈折せず
事実が時間に刻まれる
物によって人は真実を感知する。
事実を関知したのに
解釈という名で嘘を塗り込み
真実であることを無意識に隠そうとする。
なんのこっちゃ
結局、偉そうに振るまったって
何も知ることはできないのだ。