街灯
雅寛
目に見える光を求めて、
街を彷徨って居たら、
何時の間にか此処に来てしまったんだ。
左目隠した僕は、
街灯の下、君の影が伸びているのに気が付かなかった。
人形抱いた君の冷たい目が、
何か言うけれど、何も言えなくて、
虚ろに僕の後ろを見つめている。
街灯の下、帰る場所を探している、
僕を冷たく人形が笑っていた。
其処に有ったはずのモノを、
思い出さなきゃいけないのが寂しくて……、
―霞んでく風景。―
前が、見えない。
君じゃない君を探していたんだ。
冷徹な真実は何時だって生け贄を求めるから、
ずっと暖かい雨に打たれて居たかったんだ。
緑色の世界が君を連れ去って、
目眩感じる僕を街灯が照らす。
足下には濡れたコンクリート。
歩き回って広がり過ぎた世界。
―血に濡れた羊は何を見ていた?―
―何を夢見ていた?―
あの頃思った事も、描いてた理想も、
上辺だけならそれなりに現実に成って行ったんだ。
君は転がる様に、
降り積もる雨に濡れていくから、
きつく掴んだ君の手、
ずっと離さないで居たいのに、
君は何処かへ消えてしまうから、
君の驚いた顔を見る度、
僕は寂しく微笑っていたんだ。
痛みは何時かは消えてしまうけど、
癒えない傷は有ったんだね。
濡れた体を引きずりながら、
僕は君を抱き締めていた。
虚ろな瞳で呟きながら、
君は人形を抱いていた。
冷たい廃工場、
君は何かに怯え震えていた。
僕はベッドの上天井見つめ目を閉じた。
涙を流しながら。
寂れた光が、凍えた僕の心を照らすけれど、体は温まりません。