新しいシャツ
ホロウ・シカエルボク





朝に
殴りつけられて
君は
目を覚ます
ほんの少しの痛みと
ほんの少しの希望
昨日始まったことは
今日も
続いている
だけど
明日には
どうなっているか
誰にも
判らない
君は
日常に半ばすり下ろされて
心の表面が
凍結した涙みたいになってる
自分を写真に撮って初めて気づいた
すごく辛気臭い顔で
腰をおろしていたこと
空白の予定
がらんどうが君の首を絞める
空気が欲しいのに
いつだって
せめて
楽に笑ってみせるくらいには
昔のようにはいかない
上手く行かなかったときのことを思う
だけど
止めるわけにはいかない
新しい言葉が流れる
ほんの少しでいい
生きるという気持ちがあれば
傷の深さなど問題にしなくていい
今日は
シャワーを浴びる日
君は
着てるものをすべて脱ぐ
長くまといすぎた
シャツは
脱皮のように脱ぎ捨てなければならない
君は
シャワーを浴びる
君の表面が
君の手癖に合わせてつるつるになる
君はちゃんと髭だって剃る
そうすると
詩なんかに縁がないような人間に見える
一見した限りでは
そう
あくまで
一見した限りではね
キッチンにあるものを確かめて
簡単な食事を作る
YouTubeを見ながら
簡単に平らげる
この前発売された
コミックの最終巻を読む
好きなコミックが
この月にはふたつ終わった
次になにを待てばいいか
いまのところ
まだ
思いつかない
いろいろなものが君を待たせてはときにはぐらかしたりもするけれど
まだ
とんでもなく強情なやつは
君の眼前に現れてはいない
それが現れたとき
君は詩が読めなくなるだろう
それが現れたとき
君は声を発せなくなるだろう
それが現れたとき
君は立ち上がれなくなるだろう
それが現れたとき
君には何も見えなくなるだろう
だがまだそいつはまだどこかに隠れていて
君のことを食べ頃かどうか値踏みしている
君は少しでもしっかりした姿勢を見せて
そいつに美味そうだと思わせないようにしなければならない
でなけりゃ
ガブリ
頭から喰われるぜ
ゴミ収集車に
飲み込まれてくみたいにさ
君はげっぷをする
今は食べたことに満足する
とりあえずこれからは
何か自分に出来ることを見つけなければならない
そう
なんというか
現実的に
君をどこかへ運んでくれるものを
そうすれば安心出来る
それで君の何が
変化するという事柄でもないけれど
君は服を着替える
新しいシャツは冷たい匂いがする







自由詩 新しいシャツ Copyright ホロウ・シカエルボク 2012-04-04 12:07:41
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